トラックを使う民間企業やバス会社、官庁にとっては、行政的な優遇策や環境的な配慮、天然ガス自動車でないディーゼル車などと対等の条件で選択できる商品だとはまだ言えそうもない。
天然ガスもメタノール、電気の供給スタンドを確保しようという「エコステーション」プロジェクトを推進してきていた。
政府一流の大風呂敷的な努力且標、アドバルーンではあったが、二十一世紀を迎えた最初の年も天然ガスタンドはその目標の一割の約200ヶ所(エコステーション補助事業対象外の天然ガススタンドを含む)になり、天然ガス自動車の国内総台数もT万二千台の大台に到達した。
この数字をどうしようもない数字とするか、それなりに結構やったではないかとするかは、当然、その評価はわかれる。
天然ガス自動車は、まだ、狭小なスキマを舞台にしていると理解するべきなのである。
世界では今、約200万台の天然ガス自動車が走っているといわれる。
結構大変な数字である。
主にガソリン、軽油が高価で、天然ガス田がたくさんある国々を中心にしているが、最近は環境悪化が深刻な南の国々の大都市などで行政が積極的に天然ガス、の転換をはかっているケースが多い。
エコステーションプロジェクトが当初、対象していた天然ガス自動車、メタノール自動車、電気自動車。
三兄弟のなかで、結局もメタノール自動車は狭小なスキマ産業としても立ち上がることはできなかった。
その理由については、本文中で触れてみたい‥・。
電気自動車については、工場の構内などを走って活躍するフォークリフトなどには大量に利用されている。
が、公道を走るエコ・カーとしては、期待されたような電気自動車時代の到来はなかった。
電気自動車から派生した一つのジャンルとして、いま、ハイブリッドカーの量産化が成功して、意外なといってもいいほどの発展の道を走りはじめている。
この発展について、筆者は¢蝸ハ生産の魔術″というコトバを進呈したい。
巧みなPRの効果と環境意識の高いユーザーの出現などとがあいまって大きな需要が生まれも大量生産の成功によってかなり高い製造原価が引き下げられて、利益の出る商品となったのである。
また、未来の燃料電池自動車の成功が期待されている。
エコステーション計画にはその後、タクシー用などを別とするディーゼル車代替LPガス自動車も加わった。
税金が低い液化石油ガスを利用するトラックは現在、自治体の清掃車などに、天然ガス自動車と並んで使用されている。
地球の歴史のなかで長いあいだ地中に埋もれてきた化石燃料、すなわち炭素と水素を、主成分とする炭化水素のなかで、気体、液体、固体となる順に、水素が少なく炭素が多くなる。
化石燃料の気体はメタンを主成分とする天然ガス、液体は原油、固体は石炭である。
石炭となるとほとんど炭素と、灰や硫黄などの不純物の固まりだ。
そしてこの化石燃料を燃やすと、水素は水、炭素は地球温暖化の原因となる地球温室効果ガスの二酸化炭素になる。
比較する回転機関の熱効率が同じなら、天然ガス燃料と、ガソリン、軽油燃料では、天然ガスのほうが排ガスは基本的にクリーンということになる。
さらに天然ガスは海上輸送のために液化する過程で硫黄分などの不純物はほとんど取り除かれてしまう。
熱効率とは、燃料がもつ熟エネルギーのどのくらいを回転力などのパワーとして利用できるかという機械的な効率のことでも自動車などについて考えるとききわめて重要な柱となる。
排ガスがいくらクリーンでも熱効率が悪ければ、絶対量としての二酸化炭素は多くなってしまうし、排ガスに問題があっても熱効率がよければ排ガス中の二酸化炭素はそれだけ少ないということになる。
いま、天然ガス自動車が行政的な強いバックアップを受け、狭いスキマの中ではあるものの躍進しているのは、都市の住民が我慢できないレベルにまで達してしまった黒煙をまき散らすディーゼルよりも排ガスがクリーンだからである。
日本の環境行政はこれまで、zOx(窒素酸化物)対策を優先して粒子状浮遊物質とも呼ばれる黒煙対策はなおざりにされてきた。
中心にしても黒煙対策は燃料噴射装置に無理な負荷がかからないようにするくらいでいわばお茶を濁してきた。
一方、∃―ロッパの先進諸国では黒煙対策が最も重視され、それなりの成果をあげてきた。
またヨーロッパではこれからの人類的テーマとされる地球温暖化現象の原因物質である。
(二酸化炭素)の排出量が車両総重量(人員、貨物、燃料なども含む)当たりでみると少ないディーゼル車を高く評価してきた。
熱効率に優れているのである。
モノをみる視点が日本とは相当にちがう。
また環境への視点も日本とはちがいがある。
局地的、ローカルな汚染よりも、地球的レベルの地球温暖化、の問題意識が高いのである。
二〇〇三年、石油業界はやっとと言うべきか、政府、自治体、自動車業界の求めに応じて低硫黄軽油を本格的に市場に流しはじめる。
この低硫黄軽油の供給をまって、T自動車などの有力自動車メーカーは排ガスを飛躍的にクリーンに浄化した新型ディーゼルエンジンを続々と登場させてくる。
コモンレール式燃料噴射システムと高性能触媒とを組み合わせたディーゼル排ガス浄化システムなどがその主力技術となるはずである。
自動車メーカーが低硫黄軽油の登場をまっているのは、軽油燃料のなかに不純物である硫黄分が多いと高性能触媒が傷んでしまうからである。
硫黄分が多くても性能を維持できる高性能触媒、あるいは自動車に搭載する硫黄除去装置などの研究開発には巨額なコストがかかるために、自動車メーカーは石油会社による低硫黄軽油の発売をまっているわけなのだ。
この注目の西暦二〇〇三年以降、都市や幹線道路沿いの住民が受容できるくらいなまでに排ガスがクリーンなディーゼル自動車の新車が次々に市場に投入されてきたとしたら、というよりは発売されはじめることは確実なことなのだが、それでも政府が天然ガス自動車を補助金、税額のカット、非課税などによりバックアップしつづけることが果たして国民から認められるだろうか。
現状では、そうした優遇策なしには、とても商品競争力を発揮しつづけられる商品とは考えられないのである。
西暦二〇〇三年以降も、天然ガス自動車が活躍できるかどうかは、改良された新型ディーゼルエンジンよりもさらにクリーンな排ガスを可能にする天然ガス自動車を国民世論が求めつづけることになるのか、どうなのかにかかることになる。
あるいは熱効率に優れた天然ガスエンジンを開発できるかである。
いま、夢のように語られることが多い燃料電池自動車の熱効率より優れた天然ガスエンジンを開発することに成功すれば、天然ガス自動車の未来は明るく開かれる可能性は高い。
燃料電池自動車が天然ガス、石油製品を改質して製造した水素を燃料とするかぎり、そのトータルな熱効率がひどく急落してしまうことは、熱効率の説明で先述した通りである。
燃料電池がその夢をフルに発揮できるのは、広大な洋上を舞台にした風力発電などによりもクリーンなエネルギーが豊富に供給されるようになる時代の到来を待たなければならないのだ。
ハイゼットトラック/ダイハツ天然ガス自動車の技術面にご関心がある読者諸賢のために、あらかじめ触れておかなければならない。
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